久々に本格ミステリらしいミステリを読みました。
「謎」「暗号」「過去と今」「探偵と依頼者」というミステリらしい要素満載の中から始まり、どこへ向かうのかさっぱりわからない流れの中
徐々につながっていく物語、急展開のピンチ、錯綜する真実、
という「ミステリファンが飛びつきそうな設定がたくさん!」というのが感想でした。
太田愛さんの「幻夏」。
初めて読む作家さんで、本屋さんで何冊かピックアップされていて、
表紙が「店員さんのお勧め」という文章の手書きのカバーがかけられていて、そういうのに弱い私はとりあえず一冊購入。
「犯罪者」が有名なのかな?と思ったけど、上下巻で外すのが嫌だったので1冊で終わる「幻夏」を。
最初に書きます。
太田愛の「幻夏」はシリーズ2作目だから注意!
いやほんと表紙のどこかに書いておいて!!!
だからと言ってもちろんこの1冊で楽しめないことは全くなかったです。
ただ、探偵と助手が出てきたときに「説明少なくない?唐突じゃない?」って思ったのは事実で、それはシリーズ2作目だからだ…と読み終わってネットで検索して気づきました。
でも引っかかったのはその程度。若干この二人が混乱することはあったけど。
破綻のない(多分)ミステリを楽しみたい方にお勧め
ざっくりあらすじは
相馬が幼いころ、短い夏の時期を一緒に過ごした尚と拓の兄弟。
兄の尚が、約束を果たさないまま唐突に行方不明になった。その場にあった不思議な暗号。
23年の時を過ぎ、警察官になった相馬は、全く違う事件でその暗号を目にする。
同時期、興信所の鑓水が、尚の母親から「尚を探してほしい」という依頼を受け、母親は姿を消す。
行方不明のまま見つからない尚と、23年の時を超えて見つけた暗号はどう関係していくのか。
というお話。
久々に、ほんとに久々に、あまり突っ込みどころがなかったです。
私は「ストーリーに破綻がある」と気になっちゃうタイプで、それを凌駕するほどの面白さ、感動、伝えたいメッセージの重さ等があればいいんだけど、
破綻していて感動もなかったら「外れだったなあ」と思うタイプ。
この「幻夏」は間違いなく「トリック」が素晴らしかったです。純粋におもしろかった。
ただ、それだけじゃなくて、
各キャラの人間性がしっかりしていたり、伝えたいメッセージの「核」は社会問題的な話ではっきりしていてよかった。
また、この小説がすごいと思うところは、引っ張って引っ張って最後にドン!というタイプではなく
ところどころに「え!そういうこと!?」っていうトリックの種明かしがあって、飽きない。
2段階になってるところもあって唸らせられました。
内容的には、もっと感動的に書く方法もあったんだろうけれど、私としてはこっちのほうが好みだっただろうと思います。
凝りすぎたトリックでもなく、ストーリに寄りすぎでもなく、人物に寄りすぎでもなく、理想的なバランスというか。
感動的!!!という描写ではないんだけど、最後まで飽きさせず、そして過去の夏にしんみりさせられる1冊です。
私としてはすごくお勧めな本。
特にミステリが好きな人にお勧めです。
作者さん、シナリオライターなんだね、相棒シリーズとみて「なるほどなあ」と思った。
なんとなくキャラクターや内容が映像にしやすい感じだったので。
久々に「いい作家さんを知れたなあ」という嬉しさを感じた1冊でした。
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1作目の「犯罪者」も読んでみます!!