小説

「さよならニルヴァーナ」 窪美澄・著

投稿日:

さよならニルヴァーナ Amazonアフィリエイトリンク

読了。
色々と考えさせられたので書いてみます。

まず、前提としてこれは実際の事件に基づいたお話しなんですね。知らずに買って読みました。
今度手記を読んでみようと思います(これはその手記が発売前のものだったようですね)

ですが、実際の事件については詳しくないので、あくまで「元の話を知らないフィクションの小説」としての感想を書きます。

※ネタバレあります。

基本的にはそれぞれの立場の人間の内面が良く描かれていて、どうなるのかと面白く読みました。
ただ気になるところも数点。

ラストの「車」の正体と地獄

ラストの「車」については、はっきりしないまま終わりましたね。
あれは「莢」の命を奪うものになった。「少年A」は行方知れずということでここも誤魔化してありますが、
あの車がはっきりしない理由、なにかの概念とか、天罰とか、そういう話だったとしたら。

あまりにも残酷すぎないか、と思いました。

莢がそこまで悪いことをしたのか。
少年Aにしても、出所してからはじっと耐えており、なにもしていない。
その二人に対する「天罰」というのなら、いったい誰の思いがそうさせたのか。

被害者の母親ではない。彼女は「莢」の存在を大切にしていた。
彼女が「莢」に対してそんなことを望むわけがない。

そう考えると、あまりに理不尽な結末で呆然としました。
作者の言いたいことは、加害者の更生への疑問?そうでなければあまりにも納得がいかない。せめて誰か、少年Aを憎んでる人がやってくれたらよかった。
例えば光の父親とか。

この話は「「少年A」に人生を変えられた人々の物語」と説明文にありました。だとしたら、すべては「少年A」への報いなのか。
ただ、それほどまでに「少年A」への憎しみや理不尽さは描かれていなかったように思う、それがこの物語の不気味さと言うか、なぜこうなった?という疑問の根底がある気がします。

「母親」という存在

この物語は、4人の視点から進みます。

・小説家への夢を断たれて実家に戻り、妹夫婦の面倒を見る傍ら「少年A」の存在を知り惹かれていく女性
・少年Aをアイドル的に崇拝する少女
・少年Aに娘を殺された母親
・少年A

そのすべての家庭も描かれているため、「誰がどういう家庭環境だったっけ?」と混乱することもあるんですが、
気になるのはほとんど「父親」が描かれず(死別する場合が多い)、「母親」のみが描かれていること。
唯一出てくるのは殺された女の子の父親ですが、「母親視点」なので「父親」ではなく「夫」の立ち位置で、彼女の「母親」は出てきても「父親」は出てこないんですよね(ここも死別でしたっけ?)

父親は「神様」の概念としてとある宗教の主で語られたりしてます。

そして「母親替わり」の「祖母」は軒並み良い人として書かれている。

途中で宗教団体にいた「ルー」が「この世をだめにするのは母親だ」ということを言うんですが(のちに撤回はしている)
そういう考えが作品全体にあったのだろうか、と思わせるほど「母子の問題」を多く取り込んだ話でもあったように思います。

しかし莢の母親と光の母親は本当に救われない。
この2人はそれほど悪いことをしたとは思えない。
でもそれが「リアルな人生を描く」ということなのかもしれない。

最初と最後の主人公である「小説家志望」の女性も、最後まで「地獄だ」「報いだ」というが
莢やその母親と比べてこちらのほうが罪は重く見えた。
特に姪を少年Aへ差し出そうとしたこと。これについての報いが「小説家になって、でも思ったほどの幸せではない」なんてことで良かったのだろうかと。

とにかく「すっきりしない」が全体を通した感想でした。

さよならニルヴァーナというタイトル

正直これが一番わからなかった。
ニルヴァーナについて詳しくないので、もしかしたら作中でバンドや曲を匂わせるようなことが描かれてるのかもしれませんが、
しっかりと書かれてるのは1度のみ。しかも主要人物が勧められただけ。
これでなぜこのタイトルになったのだろう。
個人的に、好きなバンドがこのような使われ方をしたら微妙な気持ちになるなあ、と思った。
もうちょっと理由が知りたかった。

読みごたえはありました。作中にすっかり入り込んでしまった。
面白かった?と聞かれたら、面白かった、と答えると思う。
人間の内面の描き方がすごく勉強になりました。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

さよなら、ニルヴァーナ (文春文庫) [ 窪 美澄 ]
価格:880円(税込、送料無料) (2024/1/14時点)

-小説

Copyright© Free file , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.